近年、パスワードに代わる本人確認のソリューションとして注目されているのが人間個々人が持つ固有の特徴によって本人を特定する手段である生体認証です。代表的なものではこれまでにも指紋や静脈などでの認証が古くから行われてきましたが、比較的高価であったのが一般的でした。

この10年ほどの間でAI技術の飛躍的な発展により、パソコンやスマートフォンにも生体認証が安価に搭載され、より身近なものとして活用されています。この記事では、生体認証の中でも汎用的となってきた顔認証技術の特徴や最新のアプリについてご紹介をしていきます。

1.顔認証とはどのような技術?

身体的な特徴は本人特有のものであり、複製が難しく、なりすましが困難なため、不正利用される可能性がとても低いとされています。

一度登録をしてしまえば、端末などの画面に顔をかざすだけで本人確認がとれるため、直接パスワードを入力する手間を省くことができます。

そんな中でも、顔認証は生体認証のひとつとして近年頻繁に利用されるケースが急増しており、安価に実現できる割にはセキュリティのレベルが高く安全な認証方法です。

1.1 生体認証とは

生体認証とは、指紋や静脈、声などの身体の一部などを使って本人を確認するシステムで、別名「バイオメトリクス認証」とも呼ばれています。

生体認証では、予め個人を特定できる身体の部位などを登録しておき、認証が必要な都度照合を行います。照合結果から、登録したものと一致すれば本人だと判断されます。

生体認証の方式には指紋や血管、虹彩、顔を使ったものが多く見られますが、他にも耳の形やDNAを利用したものまで数多くの認証方法が存在します。パスワードの場合は忘れてしまったり、他人に見られてしまったりなどのリスクもありますが、生体認証であればその心配はいりません。

1.2 顔認証技術とは

顔認証技術は、生体認証のひとつで人の顔を「鍵」として認証を行います。顔認証技術はより身近なものとなっており、スマートフォンやパソコンのロック解除、コンサートやレジャー施設での入場チェックなどに利用され始めています。

人の顔がパスワードとなるため、偽装や複製が難しく、セキュリティを強化することができます。また、パスワードを使いまわさないように複雑な文字列を管理する必要がないため、利用者の負担が少なくスピーディーに認証ができるのも大きな利点です。

2.顔認証技術の仕組み

顔認証技術の具体的な全体像、2D認証と3D認証の違いについて解説をしていきます。

2.1 全体像

顔認証技術では、目や鼻、口の位置や顔の領域の位置や大きさをもとに個々人の特徴量を算出するアルゴリズムを持って個人を登録します。認証時にはそのそれぞれの測定結果と特徴量の照合を行います。パスワードを設定する必要がないため、利便性が高く専用装置も不要なので導入がしやすいです。また、指をかざすなどの操作が不要なので、特別な操作をせずに認証をすることが可能となります。

最近ではマスクをつける機会が多くなっていますが、一部が隠れていても認証ができる仕組みも開発されはじめています。

顔認証技術をより確実にするために、LiDAR(Light Detection And Ranging;光による検知と測距)というレーザー光を利用し、離れた物体の形状や距離を測れるセンサー技術があります。自動運転車の「眼」として使われることが多かった技術ですが、暗所にも強く、被写体をより認識しやすいことも大きなメリットであることと安価にデバイスが作れるようになってきた事から汎用性の高い領域でも使われ始めています。

LiDARを使用することにより、防犯、店舗の入退室管理や混雑状況のモニタリングなど、ざまざまな場所での活用が期待できます。

2.2  2D認証と3D認証

2D認証とは、別名「ビジュアルベース」と呼び、撮影した画像から輪郭や目、鼻、口といった顔のパーツの位置関係を計測し、計測した顔をデータ化して保存しておき、認証時に再測距した結果が登録されている個人かどうかを特定する方式です。

センサーは必要なく、一般的なIPカメラで導入ができるメリットがあります。ただし、照明の明るさに影響されやすかったり、平面のみで識別を行うため写真でも認証されてしまう可能性があります。

3D認証は、別名「IRベース」と呼び、ビジュアルベースに加えて、赤外線カメラで顔の凹凸や奥行情報をデータ化し、認証時には登録されている個人かどうかを特定する方式になります。2D認証とは異なり、照明の明るさの影響を受けず暗い環境でも精度を維持することが可能です。また、写真など偽顔も判別できるのでなりすましを防止することができます。専用カメラの導入が必要となりますが、より精度をあげるためには3D認証のほうが確実でしょう。

3.顔認証技術を活用するメリットとデメリット

セキュリティの強化や本人確認を確実にするためにも顔認証技術は効果的です。こちらでは具体的なメリットをご紹介していきます。

3.1 非接触での情報取得

現在のコロナ禍の情勢では、様々なものに触れることをできるだけ避け、非接触を心がける方が多いと思います。そこで、これまで広く使われてきた指紋認証に代わって顔認証技術が採用される機会が激増しました。直接機器に触れることなく個人を認証することができるので、衛生面などを気にせずに利用することができます。

顔を認証するだけでよいので、手に荷物を持っているときや、手袋を着用していてもパスワードの入力をする必要がないので、スムーズに行えるということも大きな利点です。

3.2 不正・なりすまし防止

顔認証技術を使用することによって、不正やなりすましを防止することができます。パスワードの設定のみでは何らかの原因で漏洩してしまう可能性も考えられます。

顔認証技術を合わせて利用しておくことで、セキュリティレベルが高くなりますので、なりすましが困難となり、不正防止に役立てることができます。偽造検知技術の精度を向上するためにも開発が進んでいるので、今後ますます安心して利用することができるでしょう。

3.3 複雑な機材が必要ない

指紋認証の専用読み取り機器など、複雑な機材を用意する必要がないということも大きなメリットです。一般的なWebカメラやソフトウェアさえ用意してしまえば認証が可能となります。また、顔で認証を行うので認証媒体の紛失も防ぐことができます。顔認証技術は、すぐに取り入れることができるので、難しい手順をふむ必要もありません。

4.顔認証技術のビジネスシーンでの活用例

ビジネスシーンでの活用例をご紹介します。手続きにかかる時間の削減やストレスを減らすためにも、ビジネスシーンに顔認証技術を取り入れておくことをおすすめします。オフィスの入退室管理、チェックイン時の本人確認、店舗で決済を行う際に活用できる顔認証技術をまとめました。

4.1 オフィスの入退室管理

オフィスの入退室管理に顔認証技術を取り入れている企業が増えています。入退室をするときにICカードを使用する施設は多いですが、あくまでもICカードを認証するものなので、ICカードさえあれば本人以外でも利用できてしまうというリスクがあります。しかし、顔認証技術があれば、セキュリティの強化はもちろん、ICカード忘れたり、紛失してしまったりした場合でも確実に本人確認がとれるため、安全に入退室をすることができます。また、顔認証技術を取り入れていればICカードや鍵が不要なので、荷物を持っていて両手がふさがっていても楽に入退室をすることが可能です。

4.2 チェックイン時の本人確認

チェックイン時の本人確認として顔認証技術を使用することで、確実で安全にチェックインをすませられます。非接触で簡単にチェックインを完了することができるのも大きなメリットです。顔認証をするだけで本人確認がとれて、鍵の受け渡しや料金の支払いなどの応対時間を削減することができ、一括で処理をすることが可能となります。

4.3 店舗の決済や防犯

店舗の決済で顔認証技術を使用することで本人確認が確実にできるため、不正利用の防止をすることができます。顔認証による決済は急速に広がり始めており、業務の効率化をはかるために取り入れられています。現金やクレジットカードの受け渡しが不要なため、店舗従業員の負担を減らすことができます。また、人と人との接触機会が減るので感染症対策にも有効です。

5.顔認証技術を活用したアプリ

非接触機能への関心が高まっているコロナ禍以降の情勢では、顔認証技術がより身近なものとなってきています。それ以前から中国では顔認証技術によって幅広く購買行動や認証がスムーズになっていく傾向が見られていましたが、今後より一層安価に精度高く普及し始めた顔認証技術を取り入れることによって、セキュリティの強化や本人確認などを安全に行うことができるでしょう。パスワードの入力などを直接手で行う必要がなく、ご本人の顔が「鍵」となっているので、スムーズでスピーディーな認証ができます。また、なりすましの防止ができるので防犯対策にもなります。

世の中には、指紋や虹彩、手や身体の一部を使う生体認証がありますが、その中でも安価に安全で精度の高さをバランスさせ、なおかつ非接触であるという顔認証技術は、多くの場所で利用されはじめており、今後の生活に欠かせないものとなるのではないでしょうか。

5.1 顔認証アプリ「FreeiD」

「FreeiD」は、顔認証サービスの管理用アプリケーションです。

簡単に個人情報と顔写真を登録し、サービス利用の許諾を行うだけで本人認証ができ、顔認証サービスが利用できるようになります。IDやパスワードの入力は一切不要です。

既存の顔認証ソリューションと異なることは、個別の場所や企業のアプリケーションでいちいち個別に顔を登録することが不要で、一度このアプリで登録さえ済ませてしまえば、他の顔認証アプリケーションとも相互に顔認証IDとして連携することが最大の特徴です。

よって、これまでは別の顔認証鍵であったオフィスなどへの入退館とタクシーへの乗車と決済、飲食店やホテルでの予約確認と決済等がシームレスに可能となります。さらにオフィスや集合住宅への入退室に鍵やカードが必要なく顔をかざすだけですみます。

個人情報の管理も徹底しており、十分なセキュリティ基準のもと厳重に保護してありますので、安心して利用することができます。

5.2 Actcast

Actcastは、わかりやすく説明するとネットワークに接続されたエッジ側のデバイス上でAIを動作させて周辺の環境や状態を読み取り、高度に判断してくれるソリューションです。

Raspberry Pieといった汎用的なエッジデバイス上でディープラーニング推論を行う軽量のAIソフトウェアを稼働させて様々なカメラ、センサーといったハードウェアと、それぞれから上がってくるデータを判断する学習済AIソフトウェアモジュールをクラウドからダウンロードして実装し、利用目的や判断するモノゴトに応じた高度なIoTソリューションを構築できるIoTプラットフォームサービスです。

データ転送とサーバーのコストを大幅に削減し、プライバシーと機密情報の漏洩リスクを減らすことができるエッジコンピューティングのアーキテクチャとエッジ側で動作する軽量なOSおよびAIといったソフトウェアスタックを独自開発しています。 セキュリティ、産業IoT、リテールマーケティング、MaaSなど様々な分野でご利用いただくことが可能です。

個別の目的に応じたアプリの料金は日単位で課金され、一日数十円から利用ができます。デモ用の無料アプリも用意されているので、使い勝手の良いサービスとなっています。

 

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