多くの顧客とさまざまな商品のやり取りを行う必要がある流通業界においては、商品情報や物流情報などの様々な情報伝達の仕組み整備とその適正化が従来から大きな課題となっていました。オンラインでの商取引であるEコマースが発展することによってその複雑性はさらに増しており、そのため、自社でデータ分析部門を立ち上げたり、顧客管理ツールを導入して顧客との関係性強化に注力したりすることで、課題解決に取り組んできました。

しかし、顧客ごとにフォーマットが異なる点や、情報取得や情報提供に時間がかかる点など、流通業界における情報伝達の適正化は、実際にはまだまだ課題が多い状況といえるでしょう。

そこで今回は、メーカー、卸、小売間の情報伝達を効率化するために、現状の課題を認識するとともに解決策のひとつとして企業間情報交換プラットフォームという方法を紹介します。

1.商品の流通におけるメーカー、卸、小売の関係

流通にはメーカーや卸、小売など、さまざまなステークホルダーが存在します。それぞれがどのような役割を担っているのか。最初に流通業界の仕組みを簡単におさらいしておきましょう。

1.1流通の基本 

「流通」とは簡単に説明すると、商品の生産者から消費者に商品を届けるための活動といえるでしょう。ただし、もう少し分解すると流通には以下4つのモデルが存在します。

 

・商流:商品の所有権を他の企業に移すこと

・物流:商品の移動・保管

・金流:商品対価である資金を移すこと

・情報流:商品に関する情報のやり取り

 

一方、流通に関わる業者・ステイクホルダーも以下のように分類されます。

 

・メーカー:商品を生産する企業

・卸売業者:商品を仕入れ他の企業へ再販する企業

・小売業者:消費者に商品を直接販売する企業

 

ビジネスを行ううえでは、メーカーが商品を生産し、卸売業者などを経た後、小売業者から消費者に販売されることが一般的です。ただし、メーカーが直接販売するスタイルや、複数の卸売業者を経由させて、商品者に届けるモデルがあるなど、流通方法は多種多様となっています。

 

したがって、顧客に商品を届けるためには流通が必須であり、逆に言えば流通活動がなければ顧客が商品を入手することもできません。商流自体はオンラインでのEコマースであっても実際にモノを届ける段階では物流業者の関与が必須です。また、流通企業は国内企業だけでなく、海外企業が多く含まれる点も特徴です。

1.2多数の情報伝達が行われている  

流通活動をスムーズに実施するためには、企業間でさまざまな情報伝達を行う必要があります。例えば、顧客ニーズや商品の評価といった情報を取得・提供することで、売れる商品が流通することになるため、流通企業だけでなく消費者にとってのメリットも高くなるわけです。

こうした情報取得や情報提供は、流通情報システムを利用することで行われています。流通情報システムはメーカーや小売、卸といった流通企業内の社内業務機能を支援する「企業内情報システム」と、流通企業間で商品情報や実績情報などのやり取りを行う「企業間情報ネットワーク」の2種類が一般的です。

企業内情報システムとは、商品計画・開発やマーケティング活動、顧客・在庫管理、発注活動、財務会計といった流通活動に必要な情報を社内で共有するための仕組みになります。一方、企業間情報ネットワークとは、商品や実績情報、販売計画などの情報をメーカーや小売業者、卸売業者などと連携・共有することで、スムーズな流通活動を行うための仕組みといえるでしょう。

2.企業間の商品情報伝達における課題

流通情報システムを活用して、さまざまな商品情報の伝達を行ってはいるものの、以下のような課題があるため、流通の最適化が困難な状況になっています。

2.1得意先ごとにフォーマットが異なる 

流通活動を行うためには、国内外さまざまな顧客と取引を行わなくてはいけません。そのため、取引先とデータをやり取りする際には、個社ごとに異なるフォーマットを使うことが多くなります。

 

よって、管理するデータ項目の変更や追加、場合によってはデータベースの改修なども必要です。また、海外の企業とやり取りする際には、関税の情報、輸出入に関する規制の情報、場合によっては翻訳データなどを登録する必要もあるでしょう。

 

顧客のニーズに応えるためには、市場に合った商品を素早く提供することが求められますが、得意先ごとに異なるフォーマットに合わせたシステムに改修するためには、一定の時間が必要になるため、ビジネスチャンスの喪失につながることも多いのが課題です。

2.2最新情報の取得に時間がかかる  

常に大量のものがスピーディにやりとりされる昨今の流通活動において、それを顧客の要望に応じて適正化するためには、常に最新の状態に自社のデータをアップデートすることが不可欠です。しかし、顧客によってはオーダー情報や商品データをなかなか送ってくれなかったり、送られてきた情報の信憑性を確認するために多くの時間が必要になる場合もあります。

 

場合によっては一度送られてきた情報のうち、数量などが変更になったりオーダーのキャンセルが発生して即座に出荷を止めなければならないといった、正にリアルタイムの対応が必要になるため、自社データを常に最新の状態に更新し続ける必要があるのです。

 

そのため、最新情報の取得に時間がかかり、流通活動の適正化といった大命題をじつげんするまでのリードタイプが長期化する傾向にある点はどの企業もなかなか解き得ていない普遍的な課題といえるでしょう。また、情報確認や修正・社内承認などにかかる社内コストの発生も、生産性が上がらない理由のひとつになっています。

 

一方で、スピードを重視する企業においては、確認不足が原因で受発注などの情報の信憑性が低下している場合もあり、流通活動の適正化につながりにくくなっている点も問題です。

2.3商品情報を一元化しにくい  

流通の適正化には商品情報の一元管理も必要になります。しかし、商品の管理項目は非常に多く、部署や企業ごとに独自管理されるものもあり、商品情報の一元管理はなかなかハードルが高い取組になってしまうのが現状です。

 

また、管理項目の内容更新だけでなく、SKU(Store Keeping Unit:商品点数)の追加・削除が頻繁に行われるものもあるため、部署間や店舗間、グループ企業間でデータの整合性を取ることが難しくなっています。特に、食料品や医療用品、化粧品などは、商品のライフサイクルに応じて管理項目やルールが異なる事が多く注意が必要です。

 

そのため、これまでのような企業内での取組を超え、企業間で商品情報を一元管理したり融通する仕組みの構築が、流通業界における大きな課題となっているのです。

2.4データベース構築に時間がかかる

前述した通り、商品情報を最新の状態にしておくことが流通活動の適正化には不可欠ですが、情報の内容の変化に応じてデータベースを構築するためには一定の時間も必要です。また、日本企業の多くは複雑かつ大規模なレガシーシステムで運用を行う場合が多く、ちょっとしたデータベースの項目追加などを行う際にも、多くの工数やコストが発生することも少なくありません。

 

しかし、流通活動を適正化し生産性を上げるためには、データベースの構築やメンテナンスは避けては通れない道であることから、多額のコストとリソースを投じているのが現状です。

2.5提案用の素材を都度依頼している 

顧客に提供する商品情報や販促素材などの素材は、上流の企業にお願いして入手する必要があります。もちろん、すぐに必要な素材や情報が届けば問題ありませんが、実際にはなかなかそうはいかないことが多いのが現状です。

 

素材がネット経由で来るばかりでなく、場合によっては書面やDVDなどが郵送されてくるケースもあります。よって、素材入手に時間がかかるだけでなく、紛失や情報漏洩のリスクも発生します。

 

また、商品情報のテキスト文言が間違っていた場合や情報の信憑性が低い場合には、都度確認や修正を依頼する必要があるため、さらに時間がかかってしまうでしょう。さらに、確認の頻度が企業や担当ごとに代わることによって、部署や企業間における情報の整合性を取ることが難しくなっているのです。

2.6組成や材料・流通経路情報を依頼している 

食品業界に代表されるように、パッケージに表示しなければならない成分表などの素材情報は、仕入れ先となる下流の企業にお願いして入手する必要があります。商品の改変や季節毎の商品と言ったようにめまぐるしく変わる組成に対して、実際にはなかなかスムーズに情報流通できないことが多いのが現状です。

 

チェーンストアの店頭では、様々な生鮮品がどの生産地で生産されたのか、どの流通経路で入荷したのか、そのトレーサビリティの担保にとても苦労しています。取引先からの積極的な提供がなければそのようなデータの表示や安心感の醸成は甚だ実現できないことでしょう。

3.流通における企業間課題に対するこれまでの対策 

ここまでに紹介した流通活動における課題に対して、従前は以下のような対策が講じられていました。しかし問題点も多く、課題解決にはつながりにくいのが現状です。

3.1自社でデータ分析の部門をつくる 

企業間データ連携システムやその分析環境を構築するためには、自社内にデータ連携/分析部門といった攻めの情報システムの部門を立ち上げる必要があります。しかし、ゼロからデータ分析などの部門を立ち上げてデータベースや分析環境などを構築するためには、多くのノウハウやコスト、時間が必要になるため簡単には実施できません。

 

また、少子高齢化による労働人口の減少に加え、エンジニアやプログラマーなどのIT人材の確保が非常に困難な状況です。したがって、そもそもそのような攻めのデータ連携/分析部門を立ち上げるリソースの確保が困難な場合もあります。

 

一方、すでに自社内に情報システム部門や情報管理用のデータベースがある企業においても、運用や改修に多くのリソースとコストが発生して守りの情報システム部門に徹してしまっているケースが多く、事業活動における戦略的なデータ活用への業務シフトが求められている状況です。

3.2取引先との関係を良くする 

企業間情報ネットワークを最適化するためには、扱う情報の精度や情報提供・情報取得のスピードを上げることが求められます。そのため、取引先との関係性構築が非常に重要なポイントだといえるでしょう。

 

できるだけ早く情報提供してもらえるようにすることはもちろん、社内のデータベースなどに入力しやすいように、自社フォーマットに合わせた項目で情報提供してもらうためには、企業間の関係性が良くないと困難です。したがって、取引先との関係性の維持向上にも、適正な担当者のアサインや取引状況の経過観察が非常に重要になります。

4.これからは企業間情報交換プラットフォームの活用しよう 

流通活動においては、企業内情報システムと企業間情報ネットワークの両方を適正化する必要があると説明してきましたが、企業間情報交換プラットフォームを活用することで、この問題を解決できる可能性があります。

4.1企業間情報交換プラットフォームとは

企業間情報交換プラットフォームとは、流通現場でやり取りされるさまざまな情報を、統一フォーマットで一元管理することで、部署間・企業間における情報共有を最適化するツールです。

流通にかかわる商品情報を、ローカルで管理するのではなく統一フォーマットでやり取りすることによって、部署間・企業間の情報レベルの差異を減らすことが可能になります。そのため、企業内情報システムだけでなく企業間情報ネットワークの両方を適正化できるわけです。

商品情報が統一フォーマットで一元管理できるようにするために、セキュリティ面も強固であることはもちろん、インターネット回線が弱い国とやり取りする際に、大容量データを分割して送信できる機能があるなど、それぞれの対地先の条件を考慮したセキュリティ、データガバナンス、インフラの状態を考慮した企業間データ流通の効率化を両立できるツールが求められるでしょう。

4.2企業間情報交換プラットフォームのメリット 

企業間情報交換プラットフォームの導入メリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

部署間・企業間の正確かつスピーディーな情報共有

商品情報を一元管理することで、部署間はもちろんメーカーや小売業者、卸売業者といった企業間における情報差異が極力少なくなることで、正確かつスピーディーな物流活動が行えることが期待されます。

コスト削減

企業間情報交換プラットフォームは部署や個社ごとに行っていた情報管理に必要な作業の多くをカットできることや、データベースの構築・運用にかかる人件費や開発・維持費といったコストを大幅に削減できる点がメリットです。また、クラウドベースの企業間情報交換プラットフォームであれば、社内にデータ保管用のストレージを持たなくてもよいため、サーバー維持コストの削減にもつながるでしょう。

情報共有の抜け漏れ防止

商品データを更新した際、部署や企業側の担当者が情報取得した際の受領情報を確認できる企業間情報交換プラットフォームもありますので、情報共有の抜け漏れ防止にもつながります。また、メーカーなどが商品情報提供を行う場合や更新を行う場合にも、送信・添付ファイルの履歴なども残せますので、上流・下流の関係企業ともに情報の抜け漏れが抑制できる点がメリットです。

大容量ファイルの共有が容易

商品データや販促活動用の素材の中には、多くの画像や動画素材などが含まれることがあり、データサイズが数ギガバイトにのぼるものもあります。そのため、海外などインターネット回線が弱い拠点や企業においては、データ取得が困難な場合もあるでしょう。

 

しかし、企業間情報交換プラットフォームの中には、データを分割することで容量を小さくして転送できる機能を搭載しているものもありますので、ファイルのやり取りをスムーズに行うことが可能です。

5.企業間情報交換プラットフォームで流通活動を適正化

流通活動をスムーズに実施するためには、社内やメーカー、小売業者、卸売業者との商品情報の適正管理を行う必要があることがわかっていただけたかと思います。そして、メーカー、卸、小売間の情報伝達を効率化するためには、企業間情報交換プラットフォームの活用が視野に入ります。

 

そこで、おすすめの企業間情報交換プラットフォームとして「eBASE enterprise」を紹介します。

5.1 eBASE enterprise

eBASE enterpriseは、仕入先からの商品情報提供の仕組みを備えた情報データベースシステムです。メーカー企業から小売業者、卸売業者への商品情報交換を目的に設計されています。

 

eBASE enterpriseの主な機能は、以下の通りです。

 

・POPや商品台帳の作成、店舗への情報配信といった流通企業における商品情報データベースに必要な機能を標準装備

・データ運用を効率化するブラウザベースのUIやWebカタログ構築などさまざまなオプション機能付き

・導入ハードルが低く、コストも安い

・既存のデータベースからのデータ移管も可能

・業界別のデータベースが存在し、食品、日雑品、