紙の契約書への署名や捺印は、時間がかかるとともに、紙の契約書の保存場所も必要となるため、以前から電子化が必要と叫ばれてきました。

 

昨年より、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策としてリモートワークが推奨されるようになったため、その悩みはより一層、大きくなってきているのではないでしょうか。

 

そこで、オフィスに出社しなくても、スムーズに契約手続きなどを進められる「電子契約サービス」をおすすめします。導入すれば、問題は解決するでしょう。

ここでは、電子契約の導入に至る背景と、電子契約を導入する際の課題、そして複数ある選択肢からどのサービスを選ぶべきなのかを解説します。

1.リモートワーク時の契約書関連業務の課題

リモートワークの広がりによって、バックオフィス業務ではさまざまな課題が露呈しています。特に、契約関連の課題について列挙してみましょう。

1.1契約書類の紛失リスク

紙の契約書の場合、誰がいつ契約書を持ち出したのか、社内に保管したのかを正確に記録することは困難です。うっかり電車に置き忘れてしまったり、シュレッダーにかけてしまったりと、人的ミスもゼロにすることはできません。

また紙の場合は、地震、火災、津波、洪水などの自然災害で、書類が毀損してしまうリスクもあります。

さらに、大きい企業ですと取り扱う契約書も山のようにあり、その中から書類を探し出すのに大変な労力がかかりますし、保管の過程で紛失する恐れもあります。

1.2稟議・申請フローが複雑

契約書の作成にあたっては、関係する部門や役職者の稟議処理が必要です。

稟議の承認フローは、社内の法務部門、知財部門、経営企画部門、品質保証部門、事業部長、取締役会、社長など、契約書の種類によって変化し、とても複雑です。

紙の契約書では、責任者が不在の場合は承認されずに回覧がストップしますので、全ての部門の承認を取り付けるのに、とても時間がかかってしまいます。

さらに、リモートワークともなると、この申請フローの維持はもはや不可能でしょう。

紙での稟議処理を続けるのであれば、決裁者によるオフィスの出社が必要となります。

1.3署名・捺印に時間がかかる

書面で契約を取り交わす際は、まず原本を印刷して押印し、郵送するか契約先まで持参します。そして、相手方の押印と原本の返却が必要なため、締結までに1~3週間かかることも珍しくありません。

また、その途上で契約を変更することになった場合は、再び印刷工程からやり直しが求められますので、非常に非効率です。

さらにリモートワークでは、この工程をこなすのに出社しなければならないケースも出てくるでしょう。

2.電子契約システム導入により解決すること

前項では、契約業務におけるバックオフィス業務の問題点について、洗い出しました。

では電子契約を導入することで、社内のどんな問題が解決できるのでしょうか。

2.1ペーパーレス化

バックオフィスを完全にリモートワーク化するには、いつでもどこでも取り扱うことができる環境が必要なため、ペーパーレス化は避けては通れません。

電子契約を導入すると、契約書を一元管理できますので、検索性が高くなります。

また、押印を省略でき、契約書類を保管するキャビネットなど場所の確保も要りませんので、ハンコを押す作業や、契約書の内容を照会するためだけの出社が不要になります。

2.2業務フローの簡略化

契約書を取り交わす際は、その作成から締結まで一連のフローがありますが、電子契約であれば、契約内容の確認、契約書のドラフト作成、文書内容の確認と修正、製本と取り交わしなど、必要な業務について、システム上で他部門と一元的に管理することが可能です。

承認ルートも明確になりますので、複雑なフローの簡略化と定型化が実現します。

また、社内の承認プロセスにおいて、今どのフェーズにあるのか、次に誰が何をすべきなのか、アクションが明確になりますので、混乱や放置を防ぐことができます。

2.3全体的なコスト削減

紙をなくして電子化することで、コスト削減も見込めます。

 

書面を取り交わして保管をする場合、紙の印刷や郵送、回収、保管など、多くの手間がかかっています。また、作業にかかる人件費もありますし、確実に相手まで届いたかどうかの確認、相手の到着までの待ち時間など、契約が多ければ多いほど、コストは増加します。

しかし、電子契約にすると、印刷や製本の作業は不要で、契約書の作成から署名、締結までのワークフローがクラウド上で全て完結。契約によっては、ものの数分で締結することもできますので、大幅なコストの削減となります。

 

そして、紙の契約書には必須だった、収入印紙の貼付は不要になります。印紙税は紙の課税文書のみを対象としており、電磁的記録で作成されたものは非課税だと、平成17年の国会答弁において、内閣総理大臣が答弁しています。

そのため、契約書を取り交わすことが多い会社では、年間にするとかなりの額を削減できるでしょう。印紙の購入や割り印の手間も省略できます。

3.電子契約システム導入時に注意すべき3つの法律

2000年代に入って、電子契約に関する法整備が進み、電子契約を導入しやすい環境になりました。また、クラウドサービスや電子署名など、電子契約で必要な技術の開発も進んでいます。

ここでは、電子契約の導入時において、注意すべき3つの法律を見ていきましょう。

3.1電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、ペーパーレス化の促進を目的とした法律です。国税関係帳簿書類を電子データで保存することを認めています。

同法では、紙での保存が原則となっている、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、総勘定元帳や仕訳帳、現金出納帳などの各種帳簿を、特例として電子データで保存できることが定められています。

 

これまでも、スキャナやデジカメで撮影したデータで書類の保存が可能でしたが、基本的には紙の書類を受け取らなければなりませんでした。2020年の法改正では、改ざんできない状態であれば、電子データが税務上の証明として認められるようになりました。

また、帳簿書類の保存期間も7年間あり、紙の書類では保管スペースを確保するだけで一苦労で、その整理などの人的コストもかかりましたが、これからはデータで書類が確認できるため、経理業務を効率化できます。

 

なお、電子データでの保存を導入する際は、開始する3ヵ月前までに、所轄の税務署に申請が必要です。申請には、使用するシステムの概要資料や、操作説明書の添付が義務付けられています。

適用を受けるための条件もあり、記録事項の訂正や削除の際でも事実内容を確認できること、他の帳簿との相互関係を確認できること、記録事項を画面や書類に整然かつ明瞭な形で出力できることなど、真実性と可視性が求められます。これらを満たすサービスを選択しましょう。

 

さらに、導入に伴い、経費精算のルーチンが変わりますので、スムーズな移行をするためにも、あらかじめ社内規定を整備しておきましょう。

3.2電子署名法

電子署名とは、従来の直筆署名と押印による本人証明に代わりに、同意の記録を電子ファイルに行った本人の確認と、作成時以降におけるデータ改ざん防止の機能を施した仕組みを指します。

契約をする本人がこの電子署名を電子契約書に施すことで、その契約の正式な成立が認められることになり、この法的有効性を規定した法律が「電子署名法」です。

デジタルデータは、紙へのサインや押印とは違って、偽造が簡単にできてしまう欠点があります。

そのため電子署名では、電子証明書とタイムスタンプの付与が必要になります。

 

注意すべき点としては、「全ての契約が電子署名でできるわけではない」ことです。

消費者保護を目的として、訪問販売、電話勧誘販売、不動産などの取引では、書面での契約が義務付けられています。自社の契約事項を洗い出し、電子署名化できるもの、できないものを整理する必要があるでしょう。

 

また、電子書面化には、契約する相手方の同意が必要です。

相手が拒んで書面での契約を希望した場合は、相手に合わせなければならないケースが出てきます。また、同意を得た場合でも、自社と同じ電子サービスを利用してもらう必要があり、相手に手間や費用負担を強いることになります。

そのため、導入する電子署名サービスは、相手方の負担をできるだけ抑え、楽に契約締結ができるものを選択する必要があります。

3.3e-文書法

e-文書法とは、会社法や商法、証券取引法などで保管が義務付けられている全ての書類について、電子ファイルでも保存できることを定めた法律です。電子文書法とも呼ばれます。

 

対象の文書は多く、会計帳簿をはじめ領収書、請求書、納品書、預金通帳などの財務・税金関係書類、定款、株主総会や取締役会議事録などの会社関係書類、貸借対照表や損益計算書といった決算関係書類などが挙げられます。

 

導入にあたっては、e-文書法で定められている、技術的基本要件を満たすことが必要です。

まず、電子化されたデータが、必要なときにすぐ表示できるようにされており、かつ明瞭に出力される「見読性」が求められます。

次に、必要なデータをすぐに取り出せる仕組みになっており「検索性」が確保されていること。

さらに、文書の種類によっては、タイムスタンプや電子署名が使用されており、改ざんできない状態に保たれている「完全性」や、不正アクセスの抑止が施されている「機密性」も問われます。

 

導入時の検討においては、これらの法的要件を満たしたサービスを選択する必要があるでしょう。

4.おすすめ電子契約システムをご紹介

電子契約の導入するメリットと注意すべき点、対応する法律について見てきました。

これらの点を満たす、弊社がおすすめする電子契約サービスを2つ、ご紹介しましょう。

4.1DocuSign(ドキュサイン)

DocuSignは、アメリカ発の電子契約サービスです。

世界180カ国で利用され、43の言語での電子署名に対応しており、グローバル展開している企業に向いています。署名作業のみなら、無料で利用できます。

 

DocuSignを導入することで紙の契約から脱却し、時間や手間を大幅に短縮して業務の効率化を実現します。書類の保管にかかる時間や資材も削減でき、過去の契約書の検索も容易です。

ドキュサインは、合意、契約、稟議の起案準備、署名捺印、実行、管理などの一連のプロセスを自動化します。パソコン、スマホを問わず、いつでもどこでも署名捺印が可能です。

 

ただし、印鑑がない海外の考え方を基準に作成されており、日本に馴染みのない用語も出てくるため、トライアルで自社に合っているかどうかを見極めてから、導入することをおすすめします。

4.2Cloudsign(クラウドサイン)

Cloudsignは、弁護士ドットコムが展開する、国産の電子契約サービスです。

日本の法律に特化した弁護士が監修するサービスで、契約書のテンプレートが豊富に用意されており、必要な情報が書かれている契約書を誰でも簡単に作成できることがポイント。

 

契約締結までの流れは、

①契約書をアップロード

②取引先にメールで通知

③相手に電子署名をいただく

とわずか3ステップで完結します。

 

また、大型の契約や、複数のフリーランスとの契約が発生した場合でも、業務委託契約書や請負契約書の作成において、一括送信機能を利用することで、大幅な業務効率化を図ることができます。

契約書はクラウドで一元管理されますので、業務の透明性が向上し、契約更新の漏れや紛失、改ざんや漏洩といったトラブルを防ぐことが可能です。

ソフトウェア同士が機能を共有する「API連携」にも対応しているため、すでに社内にあるシステムと組み合わせて使えるというメリットもあります。

 

現在、国内のさまざまな企業で採用されており、国内シェアは約80%。

売買契約のほか、雇用契約書、労働条件通知書、金銭消費貸借契約証書、秘密保持契約書(NDA)、代理店契約書など、あらゆる書類に利用ができます。

 

対応言語は現在、英語と日本語のみですので、利用できる国は限られます。

Cloudsignは、電子署名法に準拠しているクラウド型電子契約サービスであるという確認を、日本で初めて関係省庁から取得しています。さらに2020年6月には、法務省がCloudsignを、商業登記に利用可能な電子署名サービスとして指定しました。

5.リモートワーク時の契約関連業務は電子契約システムで解決

電子契約の導入に向けて、その背景と導入時の課題、そしておすすめの電子契約サービスを紹介しました。いかがでしたでしょうか。

 

電子契約サービスの導入で、オフィスに出社しなくても、契約手続きをスムーズに進められる環境ができ、業務効率改善とコストの大幅な削減、そしてリモートワークへの対応が可能となります。

 

株式会社INDUSTRIAL-Xでは、Cloudsignを導入し、お客様や従業員との契約文書の電子化を行っています。その経験を活かして契約書の電子化をはじめペーパーレスと捺印レスのソリューション導入を数多く支援している実績があります。導入にあたっては、当社でサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。