日本におけるマーケティングオートメーション(MA)の市場は、拡大の一途を辿っています。その背景には、情報集がオンラインで行われるようになったことが挙げられます。

近年、営業担当者との面談の前に商品・サービスの選定が終わっているケースが増加し、導入検討段階で見込み顧客(リード)に営業担当者が会うことは難しくなりました。そのため、オンライン上での非対面による顧客開拓を仕組化することの重要性が高まっているといえるでしょう。

本記事では、マーケティング自動化ツールの導入を検討している企業に向けて、MAでどのようなことを自動化できるのかを説明し、導入するメリットや導入事例をご紹介します。

 

1.マーケティングオートメーション(MA)とは

マーケティングオートメーション(Marketing Automation)とは、ツール(ソフトウェア)を使って見込み顧客(リード)や顧客の興味・関心に合わせて効果的かつ効率的にマーケティングを行う手法です。さまざまな企業がMAを導入するようになりましたが、その背景にはインターネットの普及に伴って、「顔見知りの営業担当者に電話する」という行動よりも「検索エンジンで検索をする」という行動を取るケースが多くなったという事情があります。

以前は、法人営業の場合、決裁権限を持つ担当者と面談を重ねて信頼関係を構築した後、発注書にサインしてもらうことが多かったのではないでしょうか。しかし近年は、BtoCだけではなくBtoBでも、営業担当者に連絡が来る前に顧客自身がインターネット上を検索して、商品やサービスの比較検討を完了しているといった事例が多くなりました。対面営業をかける前に検討が終わっている事例が増加しており、Web上に情報を掲載し、サイト訪問者とコミュニケーションを図らなければ商品やサービスが売れない時代になったといえるでしょう。

Webサイトの訪問者の多くは発注するかどうか不明確な見込み顧客(リード)です。検討段階に入った際に自社製品・サービスを比較検討対象に含めてもらうためには、MAツールを使って情報収集段階から接触を開始し、継続的にコンタクトを取る必要があります。

 

2.マーケティング業務のうちMAで自動化できるもの

ここからは、マーケティング業務のうちMAツールでどのようなことを自動化できるのかについて説明していきます。

2.1リードを増加させる

自社の商品やサービスに興味・関心を有するリードを増やすのは、簡単なことではありません。リードを獲得するための活動(リードジェネレーション)として「コンテンツマーケティング」「Web広告の配信」「SNS」といった手段・チャネルが用いられますが、手動で実行すると莫大な工数が発生します。

MAツールを導入すれば、Webサイト制作に関する専門知識を持っていなくても、ランディングページや登録フォーム、問い合わせフォームを簡単かつ迅速に用意できます。加えて、WebサイトやSNSに配信する広告を、閲覧者・ユーザーの興味・関心に合わせて自動的に出し分けることが可能な点も、MAツールの魅力といえるでしょう。

2.2見込み顧客のアクションを促す

見込み顧客を獲得しても、そのままでは商品・サービスの購入にまで結びつきません。「資料請求・ダウンロード」「問い合わせ」「会員登録」といったアクションを促すためには、まず「サイト上のどこに何秒あるいは何分くらい滞在していたか」といったデータを分析し、サイト訪問者の興味・関心を把握する必要があります。

そして、プッシュ通知によってサイトへの再訪を促し、ポップアップ機能によって閲覧者の興味・関心にマッチしたメッセージを出して離脱を防ぎつつ、メールアドレスや電話番号、氏名といった個人情報を獲得することが求められます。MAツールを導入すれば、これらの作業の自動化が可能です。

2.3リードを一元管理する

MAツールを使えば、リードを手間なく一元管理できます。管理できるのは、対面営業の際に名刺を交換したり、オフラインのイベント(セミナーや展示会など)で接触したりした実名リードだけではありません。自社のWebサイトを訪問した匿名リードのアクセス履歴などの情報もまとめて自動的に管理できます。

その結果、アプローチできる対象が大幅に広がり、より戦略的なマーケティングが可能になるでしょう。

2.4ABテストを行う

ABテストとは、特定の要素のみを変更した2パターン(AパターンとBパターン)の広告やメールなどを用意し、どちらのほうが良い成果を上げることができるのかを検証するマーケティング手法です。

広告を出したりメールを送信したりしても、常にクリックされたり開封されたりするわけではありません。コンバージョン率や開封率を向上させるためには、複数のパターンの広告・メール文面を作成して、どちらのほうが効果があるのかをテストする必要があります。トライアル&エラーを繰り返すことになるため、手作業で実施すると時間や手間がかかりますが、MAツールを使えばABテストに必要な作業を自動化できます。

2.5顧客のデータ分析を行う

Webサイトやメールマガジン、SNSといったさまざまなチャネルから収集できるデータは膨大な量になります。これらを手動で分析すると、多大な時間や労力がかかります。また、分析やアプローチを営業担当者の「勘」や「経験」で行う場合、担当者によって成果が大きく変動することもあるでしょう。

MAツールにはリードクオリフィケーション機能があり、例えば、「メール開封」を「1点」、「資料請求」を「3点」などと行動をスコアリングして、優先的にアプローチすべき対象を自動的に見極めることを可能にします。購買意欲の高い見込み顧客(ホットリード)が抽出されるため、テレフォンアポインター業務の効率化に結びつきます。

2.6セグメントごとにターゲティングをする

リードの興味・関心はさまざまであるため「同じ内容のメール・広告を送信・配信すれば良い」というものではありません。

効果的なリードナーチャリング(情報を提供して購入意欲を向上させること)を行うためには、保有するリードのデータをニーズや属性といった切り口で「セグメント」(グループ)に分類し、セグメントごとにターゲティングメールやリターゲティング広告を配信する必要があります。MAツールは、これらの作業を適切なタイミングで自動的に実行することを可能にします。

 

3.マーケティングオートメーションを導入するメリット

マーケティングオートメーションを導入するメリットを3つご紹介します。

3.1細やかなリードナーチャリングが負担なく可能に

リードナーチャリングにおいては、個々のリードの行動に応じて適切なタイミングで施策を講じることが不可欠であり、1対1のコミュニケーションが前提となるため、工数がかかります。

MAツールを導入するメリットのひとつは、作業が自動化されることによって負担が減り、少人数の担当者で細やかなリードナーチャリングを行えるようになることです。

3.2人的ミスを減らせる

マーケティング業務に限ったことではありませんが、人間が作業を行うと、一定の頻度で「人的ミス」が発生してしまうものです。

MAを導入すれば、ターゲティングの設定ミス、メールマガジンの送信ミス、レポーティングのミスといったヒューマンエラーを減らせます。

3.3ユーザーの興味関心にマッチしたマーケティング施策が実施できる

インターネットの普及により、自ら検索エンジンにキーワードを打ち込んで商品・サービスを調べるケースが増加しました。このような状況では、個々のリードの知識や興味・関心に合わせたアプローチ(One to Oneマーケティング)が不可欠です。

MAツールを導入すれば、各リードのデータを管理・分析して「興味のある商品・サービス」や「アクション」を紐付けて効果的に施策を講じることが可能になります。

 

4.まとめ

マーケティングオートメーションツールを導入すれば、マーケティング業務のうち「リードを増加させる」「見込み顧客のアクションを促す」「リードを一元管理する」「ABテストを行う」「顧客のデータ分析を行う」「セグメントごとにターゲティングをする」といったものを自動化できます。

「細やかなリードナーチャリングが負担なく可能になる」「人的ミスを減らせる」「ユーザーの興味関心にマッチしたマーケティング施策が実施できる」といったメリットがあるため、アナログな手法に限界を感じている企業は、MAツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。