シリーズ解説〜DXが解く届けられないジレンマ〜物流業界の課題解決と止まらない供給線のために〜だ一回は”物流業界の課題とは”と題し、物流業界の課題について解説します。

1.物流業界の分類

まずはじめに、物流の分類について解説します。物流業界は、国内外での貨物輸送に欠かせない重要な役割を担っています。この業界は、主に陸運、海運、空運の3つの区分に分けられ、それぞれ特有の特徴と利点を持っています。

1.1 陸運

陸運は、国内輸送において最も重要な役割を果たしています。輸送量においては、自動車輸送が55%を占め、内航海運が40%、鉄道が4%、そして空輸がわずか1%となっています。陸運の主要企業としては、ヤマト運輸や日本郵便、日本通運、日立物流などがあります。陸運は、その柔軟性と速度から、国内輸送において最優先される傾向にあります。しかし、2024年問題への対応など、解決されていない課題も抱えています。

1.2 海運

国際物流においては、海運が97%(容量ベース)を占めるほど重要な役割を担っています。海運による輸送は、大量貨物の輸送に適しており、コスト効率も高いです。主要な企業には、日本郵船、商船三井、川崎汽船などがあり、これらの企業は鉄鋼、自動車、石油ガス資源、LNG液化天然ガスなどの輸送を手掛けています。

1.3 空運

空運は、小型・軽量・高付加価値商品の輸送や緊急性が高い輸送に適しています。主要な空運企業には、全日本空輸、日本航空、スカイマークなどがあります。また、FedEx、UPS、DHL、TNTなどのグローバル企業は、自社航空機を有し、空陸一貫輸送を提供しています。

2 物流業界における課題とは

物流業界は、グローバル経済の中核を担う重要なセクターです。生産物の効率的な流れを確保することによって、世界中の企業や消費者のニーズに応えています。しかし、この業界は多くの課題に直面しており、それらを解決することが、サプライチェーンの効率化と持続可能性の向上に不可欠です。どのような課題があるか見てみましょう。

2.1 環境への影響

物流業界は、特に陸運と海運において、大量の炭素排出の原因となっています。環境への影響を減らすため、企業は燃料効率の良い輸送手段の導入、代替エネルギー源への移行、ルート最適化技術の採用など、さまざまな対策を講じています。しかし、これらの取り組みには時間と費用がかかり、業界全体での広範な採用にはまだ障壁が存在します。

2.2 デジタル化と技術革新

デジタル技術の進化は物流業界に多くの機会をもたらしていますが、同時に大きな課題も引き起こしています。多くの物流企業は、古いシステムとプロセスに依存しており、これらを最新のデジタルソリューションに置き換えることは容易ではありません。データ共有、リアルタイムトラッキング、自動化、人工知能(AI)による意思決定支援などの技術を効果的に統合することで、効率性、透明性、顧客満足度を向上させることができます。

2.3 サプライチェーンの脆弱性

COVID-19パンデミックは、物流業界におけるサプライチェーンの脆弱性を露呈しました。国境を越える輸送の停滞、生産遅延、労働力不足などがサプライチェーン全体に深刻な影響を与えました。企業は、サプライチェーンの弾力性と回復力を高めるために、供給元の多様化、在庫管理の最適化、予測分析の活用など、戦略を見直す必要があります。

2.4 労働力の問題

物流業界は、特に配送と倉庫管理において、深刻な労働力不足に直面しています。若年労働者の業界への参入を促進し、保持するためには、職場の条件を改善し、技術トレーニングを提供することが重要です。自動化とロボティクスの導入は、この問題の一部を解決することができますが、高度な技能を持つ労働力の必要性も同時に高まっています。

2.5 規制とコンプライアンス

物流業界は、運搬手段ごとに異なる国際的な規制と標準に準拠しなければなりません。これらの規制は環境保護、安全性、労働条件など、幅広い分野に及びます。新しい規制への適応は、特に小規模な事業者にとっては、運用コストの増加につながる可能性があります。また、関税や貿易戦争などの政治的要因も、国際物流における不確実性を増大させています。

2.6 顧客の期待の変化

電子商取引の急速な成長と消費者の期待の変化は、物流業界に即時性と柔軟性の向上を求めています。消費者は、より迅速な配送、追跡可能性、返品の容易さなどを求めており、物流企業はこれらのニーズに応えるために、プロセスの最適化と革新を追求しています。

3.物流業界の全体的な課題

このように物流業界はさまざまな課題が存在しております。
物流が止まることはどの業種にとっても関係するため重要課題であり、特に陸路物流はB2Bとしてはもちろん消費者としてもものが届かなくなるという点で身近な課題です。
陸運業界は、インフラの老朽化、環境規制への適応、交通渋滞による配送遅延、労働力不足などに直面しています。特に運転手不足は長距離輸送の大きな問題であり、自動運転技術への期待が高まっています。

次回は陸路物流について解説します。