現場帳票をデジタル化する前の課題

電鉄会社A社では、鉄道・軌道事業の電車技術部門において、点検業務を紙で管理していました。この方法では、転記や承認作業に時間がかかり、技能継承ができず、在庫の棚卸しにも膨大な時間がかかっていました。これにより、業務効率が低下し、全社DX基盤構築の妨げとなっていました。

実施したこと

1.  課題把握と優先順位付け 
   - 業務のデジタル化を進めるために、まず現場の業務課題を整理し、「効果の高さ」と「取り組みやすさ」の観点から優先順位付け。
   - DXビジョンの策定により、電車技術部の目指すべき姿を明確化。
2.  現状の点検表の整理 
   - 現状の点検表を整理し、不要なものを削減・統一した上でデジタル化を実施。
3.  点検作業者に向けたマニュアル作成 
   - 作業判断の属人化を防ぐため、誰でも簡単に入力できるマニュアルを作成。
4.  承認フローの電子化 
   - 点検表のデジタル化に併せて、承認時のハンコをすべて電子化。
5.  社内技術習得の仕組みづくり 
   - 点検業務における技術継承の仕組みを構築。
6.  在庫管理のシステム化 
   - 在庫管理をシステム化し、効率的な棚卸しを実現。
7.  プロジェクト進行体制の確立 
   - 隔週のプロジェクト進捗共有会議を実施し、メンバーが前向きにプロジェクトを推進できる組織を構築。
   - ITツールに触れる機会を設け、業務がどのように変わるか早期にイメージを持てるように働きかける。
8.  アナログなコミュニケーションの活用 
   - デジタルツールの活用に不慣れなメンバーが多いため、アナログなコミュニケーションを中心に進行。
   - 全体ミーティングと班別ミーティングを適宜組み合わせて推進。

得られた効果

1.  業務効率の向上 
   - 紙での点検業務の転記作業とハンコによる承認作業が撤廃され、現場工数が大幅削減。
   - デジタル化による業務の標準化が実現し、技能継承が容易に。
2.  リアルタイムな在庫管理 
   - 在庫管理のシステム化により、棚卸しにかかる時間が大幅短縮。
3.  プロジェクト推進力の向上 
   - メンバー一人一人のデジタルスキルと組織変革スキルが向上し、組織全体が主体的にデジタルプロジェクトを推進できる状態に。
4.  明確なDXビジョンの共有 
   - 「電車技術部」をどのような部署にしていきたいか、広島にどのように貢献したいかという目指すべき姿を全社で共有。
5.  プロジェクトの透明性と協力体制の確立 
   - 隔週の進捗共有と詳細な要件検討を通じて、プロジェクトの透明性を高め、協力体制を確立。

これにより、電鉄会社A社は、全社DX基盤構築のための現場業務DXを着実に進め、鉄道・軌道事業の電車技術部門における業務効率の向上と標準化を実現しました。