現場作業においては就労中に様々なトラブルが発生する恐れがあります。労災とは労働災害の略称であり、作業員が業務中に発生した事故や病気などのトラブルに巻き込まれることです。

今回は、そのような労災発生のリスクを防ぐための作業員管理の重要性や現場に潜む労災リスク、作業員管理における課題や重要なポイントなどについてご紹介します。

1.製造現場における作業員の安全管理とは

製造現場において、機械による「はさまれ・巻き込まれ」による事故は非常に多く起こります。また、産業で起こる事故の中で、全体の約3割を占めているといわれています。

 

労災の被災者は経験年数5年以下のまだ慣れていない作業員が多く、危険部位が露出した劣悪な環境での作業や作業中に誤って機械に手を入れたこと、機械の作業手順の無視など、作業員が業務ルールや作業手順を怠ったことが原因と思われるケースが多く見られます。

 

いかに業務ルールや作業手順を定めていても現場作業員がそれを守らなければこのような事故はなかなか無くなりません。よって、事業者としては作業員を管理することが必要になってきます。

 

事業者が作業員管理を怠ったことで発生した労災では、不法行為責任や安全配慮義務違反として、被災者やその家族への損害賠償、機械設備の使用停止や作業停止などの行政処分など、さまざまな処罰や負担が課せられる可能性があります。

 

正しく作業員管理に取り組むことで労災を防ぎ、作業員のモチベーションや生産性の向上、コストの削減と抑制に努めることが大切です。

2.製造現場における作業員の労災リスクのパターン

製造業には労災はつきものです。生産活動の過程には、見えない労災リスクが潜んでいます。

労災リスクは、現場環境に原因が多く、作業をする場所や時間帯、温度など、それぞれ作業員が安全に作業ができる環境が、作業員のメンタルや体調に大きく関わります。

ここでは、製造業の現場環境で労災リスクが多く潜んでいる状況とその対策も合わせてご紹介します。

2.1 屋外作業

屋外作業では、作業床や踊り場、階段、手すり、はしごや足場、歩廊などの設備に労災リスクが潜んでいます。

 

事故の種類としては、設備からの墜落や転落が最も多く、次いで作業床や足場の踏み抜き、設備の飛来や落下事故が多発しています。

その主な原因は、設備の腐食や劣化です。雨水や海水などの水分による浸食が、腐食や劣化の大きな要因となっています。とくに築20年以上になる設備には水分の滞留が多く、腐食や劣化も大きく進行している場合があるので注意が必要です。

 

こうしたリスクを防ぐ対策としては、老朽化した設備の保守保全や更新はもちろんのこと、設計段階における滞水しない設備構造や、耐食性の高い材質の使用、耐食塗装による設備のコーティング等が必須となります。また常日頃の業務においては、滞水する箇所の水分のこまめなふきとりなどの地道な取組が挙げられます。

2.2 夜間作業

夜間は注意力が低下しやすく、最も労災が発生しやすい時間帯です。夜間作業は昼夜逆転の生活リズムになるために心身の健康バランスが崩れやすいため、作業員自身の体調管理なども重要となります。

 

夜間作業を行う場合は、その回数を削減、変則的な時間帯を設定しない、健康診断の実施、作業に見合った休養など、管理側の作業員への充分な配慮が必要となります。

 

三交代勤務などが必要な工場などにおいては、勤務の入替時間帯で、前の勤務帯の作業員との引き継ぎや設備機器のコンディションのチェックなど、昼間と操業環境が大きく変わらないかどうかを夜間勤務作業員にもきちんと伝える必要があります。

2.3 高温多湿・極寒環境での作業

高温多湿な環境での作業では、熱中症や脱水症状の危険性、極寒環境での作業には低温による凍傷などのケガや、風邪などのウイルス性の病気にかかりやすくなる危険性があるため、作業員の健康面に配慮した管理が必要です。

 

夏期のほか、加熱された製品の取り扱い、通気性や透湿性の悪い防護服などを着用したままで長時間の作業などで高温多湿な作業環境が発生してしまい前述のような体調不良に陥りやすくなります。

 

対策としては、主に設備や場所、服装の3つの観点から注意することが重要です。

屋内には冷房設備を設置し、屋外には屋根を設けて風通しのよい日陰をつくり、製品を加熱したり高熱を発する設備や加工場所には作業員との間に断熱性のある遮へい物を設けるなどの工程設備に対策を施す必要があります。また、屋外での作業の場合は、ミスト(細かな水分)散布などで適度な温度や湿度を保つ努力を行う必要があります。

 

服装や帽子は通気性や透湿性のよいものを使用し、作業上、熱を逃しにくい服装にしなければならない場合は、作業時間を短くして定期的に業務中に休憩を挟むなどの工夫も必要です。

さらに、冷房設備や、風通しのよい日陰となる所に休憩所を設けましょう。休憩所には水分や塩分を補給できる飲料が置いてあることが望ましいでしょう。

 

一方、極寒な環境は、冬の時季以外では、常に低温を保つ必要がある製品を取り扱う冷凍加工工場や冷凍倉庫などが該当します。

極寒な環境への対策としては、入退室場所付近への暖房設備の設置や、防風性能を持つ保温しやすい防寒着と手袋を作業員に着用してもらうことが重要です。また、厚手の靴下と防寒仕様の靴を用いることは大前提となります。

 

高温多湿と極寒の環境双方に共通して重要なことは、作業環境に温度計や湿度計を設置して、その日の温度や湿度、天候に応じた作業員管理を行ない、環境状態に応じたこまめな就業内容の変更や対策の実施を行うことが必要なことです。

3.製造現場における作業員管理における課題

作業員管理における現状の課題点としては、作業員それぞれのその日の体調や、正確な作業時間や場所の把握が難しいことが挙げられます。加えて、業種によっては一人の作業も多い場合が存在し、作業員や現場環境をリアルタイムで管理することが難しいなどの課題も存在します。

3.1 細かな健康管理ができない

現在、作業員の健康管理は作業員が日頃から自主的に取り組むことが主流となっており、管理者が毎日チェックしているわけではないため、多くの現場では作業員の健康管理までは管理が行き渡っていないのが現状です。

 

そのような現状を解決するためには、まずは安全衛生委員会などの自主確認組織を設置して現場の巡視を行うことが大切です。

チェックするべきポイントは、作業で使用する設備や作業方法、照明や空調設備、騒音や振動の問題、保護具や救急用具は整備具合、衛生上有害な物質の使用頻度、健康面で異常のある作業員の確認、などが挙げられます。問題点があれば、その都度改善していきましょう。

また、作業員に対する衛生教育や定期的なストレスチェック、健康診断、作業員の健康相談窓口の設置などを通して、作業員の健康状態をより管理しやすくすることが大切です。

3.2 リアルタイムで状況把握できない

製造業では、作業員が別工程に分かれて作業する場合も多く存在します。そのため、現場管理者が作業員の作業進捗まで目が行き届きにくく、作業工程の問題点などを把握しづらい状況が存在しています。

 

対策としては、まずは現地現物主義に則り、先入観や経験だけに頼らず、多方面から現場環境や作業工程、現物からできるだけ正確なデータを収集して対策すべき箇所を抽出し、対策内容を整理していきましょう。過去のデータから、平均値やばらつきなども参考にして、暫定的な異常値から判断してしまわないよう、あらゆる可能性を見出していきます。

次に、何が、いつ、誰が、どこに、という形で、問題点を分別して整理します。

最後に、重要性や緊急性を考慮しながら、整理した問題点に対策上の優先順位をつけていきます。

3.3 現場環境が伝わりにくい

製造業の現場ではひとりで作業をする機会が多く、作業員同士や作業管理者とのコミュニケーションが不足しがちです。そのため、人や作業、設備といった現場環境が周囲に伝わりにくいのが現状です。高温多湿な環境や、高所における作業などの危険性の高い現場でのコミュニケーション不足は、労災リスクにつながる可能性が高いと言えます。

 

対策としては、現場全体の作業員の知識や技術、姿勢や意識など、現場の力の向上が必要です。そのためのポイントは3つ存在します。

第一に、作業員が遠慮なく意見交換や提案を行うことができ、本音が言える現場環境づくりが重要です。常日頃から現場改善活動のPDCAを廻して、年齢や経験に依存せずにオープンに意見交換する場を醸成します。第二に作業員のモチベーション向上のための作業目的やそれらを積み上げていった際に目指すビジョンの明確化・明文化をし、日常的にその内容を復唱すると共に、数ヶ月毎にどの程度作業目的を遵守した活動が出来ているか、振り返りと次の期間の重点取組内容を再設定する機会を作ることです。最後に、作業員育成の基本となるノウハウの共有やルールの徹底、遂行できているメンバーを評価することに加え、じみちではありますが努力が成果に繋がった作業員を褒めることが大切です。

 

現場力が向上する鍵を握るのは作業環境におけるコミュニケーションです。また、現場力を向上させることにより労災リスクを防ぐことができるうえに、生産性向上にもつながります。

4.製造現場における作業員管理のポイント3つ

ここからは、労災リスクを防ぐ作業員管理について、より理解を深めるための3つのポイントをご紹介します。

4.1 アセスメント実施

アセスメントとはリスクアセスメントとも呼ばれており、現場に潜む労災リスクの特定から、労災リスク対策の実施までを記録する一連の流れを指します。

 

前段でも概要を述べたとおり、手順として、まずは作業上の危険性や有害性を特定し、それがもたらすリスクや災害の度合いを想定した上で、危険性や有害性を伴う作業の量や現状の対策などから、労災リスクを見積もります。

次に、作業工程や設備、管理手法などから、労災リスクを減らす対策を検討し、それらに優先順位をつけ、重要性の高いものから実施していきます。

最後に、実施した対策の内容や効果を記録し、次回にフィードバックします。

 

アセスメントの実施を通して労災リスクを明確化し、労災リスクや安全に対する現場の作業員全員の認識を共有できるほか、労災リスク防止のための安全対策の優先順位づけやルールの理由の明確化などの効果が期待できます。

4.2 管理マニュアル作成

前述した通り、経験年数の浅い作業員が労災に巻き込まれるケースは多く存在します。そのため、労災リスク防止のために管理マニュアルを作成して労災リスクを可視化し、安全対策への意識を高めていくことが必須です。

 

その管理マニュアルを作成するうえで重要なポイントは5つあります。

 

①労災の事例の原因と対策も合わせた分かりやすい説明する

②「かもしれない」という意識を持ち、労災リスクはあらゆる所に潜んでいると認識する

③「はさまれ・巻き込まれ」事故に合わないための正しい服装を決める

④作業手順を遵守してその必要性を認識させる

⑤「整理・整頓・清潔・清掃」の4Sに習慣も加えた5Sの徹底をする

 

管理マニュアルを作成することで、知識や技術、姿勢、意識を現場で共有し、労災リスクの防止と現場力の向上に努めましょう。

4.3 IoTの活用

IoTとは「Internet of Things」の略称で、現場で発生しているモノゴトの状態を人の代わりにセンサーでデータ化しネットワークでデータ収集してオンラインで可視化・管理できる仕組みです。IoTを製造現場に導入することで、温度調整の自動化や作業員や機械の稼働管理など、従来では人の勘と経験に依存しており、可視化や標準化が難しかったことが比較的容易に安価に実現可能となり、その取組実績は年々増加しています。

 

IoT導入の労災防止観点からのメリットは3つあります。

 

①現場環境や作業工程などの情報をデータ化、自動化できる

②データの収集や分析が難しい異常音などをデータ化して可視化できる

③異常をすぐに検知できる

 

これらのメリットを考慮すると、製造業の労災リスクを防ぐため安全管理や作業員管理も効率化できるため、積極的に取り入れると良いでしょう。

5. まとめ〜作業員の安全管理もDX化して、労災リスクを防ごう

ここまで、労災リスク防止をテーマとして、現場に潜む労災リスクと、安全管理や作業員の管理の重要なポイントについてお話してきました。

 

現場では、作業員が現場を支える”かなめ”です。そのため、まずは作業員の安全が第一です。安全第一で、現場力の向上と改善に努めていきましょう。

 

最後に、作業員の管理におすすめの商品「みまもりWatch」をご紹介します。

5.1 みまもりWatch

みまもりWatchは、腕時計型のGPSを搭載した、IoTソリューションです。

みまもりWatchでは、作業員の心拍数や皮膚温度を検知し、データを現場管理者の元へ送信します。転倒時や心拍数低下などの異常もアラートで知らせてくれますので、リアルタイムでの作業員管理が可能になります。

さらに、「みまもりWatch」は現場の温度や湿度も検知できる機能を持つため、現場環境の可視化も可能です。そして、データのフィードバックによる、アセスメントの大幅な効率化や事前の労災リスクの防止効果も期待できます。

 

みまもりWatchの特徴は、作業員への配布はデバイスのみで情報漏洩の心配がない点、そして1台の親機で100人以上をカバーでき、通信コストは変わらず、医療関係者の知見を元にした熱中症の危険度を察知するプログラムを組み込んでいる点が挙げられます。

 

このように、みまもりWatchは、高温多湿や極寒の現場環境のなどに導入した際に、とくに大きな効果を期待できるでしょう。

 

株式会社INDUSTRIAL-Xでは、向上や物流倉庫内における作業員の業務可視化と安全確保のためのコンサルティングや可視化・効率化ツールの導入支援を多数手掛けています。導入にあたっては、業務運用ルールの整備と合わせて実施することが一般的です。当社でまるごとサポートしますので、お気軽にご相談ください。