リスキリングは新語・流行語大賞にノミネートしたこともあり、業界を問わず高い関心を集めています。昨今、企業を取り巻く環境は激しく変化しており、今後新たに増える業務やニーズに対応できるようにするためには、従業員一人ひとりの知識・リスクを高めることが不可欠です。

この記事ではリスキリングの概要や必要性、注目されている背景、企業が進める際の手順・注意点などを紹介します。これからリスキリングを始めようとしている企業におすすめのサービスも紹介するので、参考にしてください。

リスキリングとは? DX時代になぜ注目されている?

まずは、リスキリングの定義や必要性、近年注目を集めている理由などを解説します。

リスキリングの定義・必要性

リスキリングの定義について、経済産業省の資料をもとにすると「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と表されています。
(参照:経済産業省「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」)

昨今においては、ビジネスモデルの変革や技術革新で働き方が急激に変わっています。今後新たに発生するであろう業務や、仕事の進め方が大きく変わるであろう職種も増えると考えられるでしょう。

新たなニーズに対応できる職業に就くため、もしくは今の職業で今後の業務に役立たせるためには知識やスキルを習得する必要があります。従業員が率先してそういった勉強をすること、もしくは企業側が従業員にスキル・知識の習得をうながす取り組みのことをリスキリングと呼びます。

リスキリングが注目されている理由

日本においては2022年の岸田総理の所信表明演説で「リスキリングに今後5年間で1兆円を投入する」との発言があり話題になりました。同年には新語・流行語大賞にノミネートするなど、国内でも関心が高まっています。
世界的に注目されるようになったのは、2020年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)における「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」がきっかけのひとつに挙げられます。

ダボス会議では2020年時点で「今後数年で8,000万件の仕事が消失する一方で、9,700万件の新たな仕事が生まれる」と発表されました。そういった新たな仕事に対応するためには、当然新たなスキルや知識が求められるでしょう。

また、ダボス会議ではそのような事態にうまく対応するために「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」といった宣言もしています。

上記の発表ではDX人材育成についても触れられており、そのなかでリスキリングの必要性が言及されました。変化が激しい時代にうまく対応するために、企業にはDXへの取り組みが求められています。それと同時に、社内人材も新たなスキルを身につける必要があります。

今後も企業が永く事業を続けるためには必須といわれているDXの概要や必要な理由、推進方法については以下の記事をご覧ください。
>>「DXとは?定義や意味をわかりやすく解説

リスキリングとリカレント教育の違いは?それ以外の用語との違いは?

リスキリングは近年注目されるようになった言葉ですが、混同されやすい類語も多くあります。それぞれとの違いを確認しておきましょう。

リカレント教育との違い

リカレント教育は「働く→学ぶ→働く」のサイクルを回し続けることです。新しいことを学ぶために、一度職を離れて大学などの教育機関で学び直すことを前提としています。
リスキリングは業務と並行してスキルや知識を身につけることであり、実務での実践に重きを置いている点も違いといえます。

アンラーニングとの違い

アンラーニングは既存の仕事に対する考えやルーティンなどをいったん捨て、新しいスタイルを取り入れることです。ビジネスモデルの変革が激しい現代ではすでにもっている知識やスキルでは対応できないことが増えたため、アンラーニングが注目されるようになりました。
場合によってはリスキリングもそういった視点で学ぶケースがありますが、捨てることを主軸に置いているわけではありません。

生涯学習との違い

生涯学習は、生涯にわたってあらゆる分野について学ぶことを指します。仕事に限らず趣味やスポーツ、文化活動、ボランティア、社会教育など、さまざまなものごとを通じて生涯をより充実させるような分野を多く含むのが特徴です。
リスキリングは業務に関連する知識やスキルの取得を目的としているため、学びの範囲・分野が異なります。

アップスキリングとの違い

アップスキリングは職場でのキャリアアップや、現在の職種のなかで新たな技術を取り入れることを目指して、自身のスキルを伸ばすことです。
一方、リスキリングは現職で活かすためのスキル習得に限らず、転職や違う分野で求められる能力を身につけることも指します。

OJTとの違い

OJT(On-the-Job Training)は職場内における、実際の職務や業務を通じて実務に活かすための学びのことです。リスキリングは現在の業務に関係のないスキルを学ぶケースも多く、また実務と関係のない場所でも学ぶことができます。

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企業がリスキリングを推進するメリット

企業が従業員に対してリスキリングを推進する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 人材育成につながる

  • 人材不足への対応

  • エンゲージメント向上

人材育成につながる

従業員のスキルが高まることは、当然ながら人材育成につながります。すでに既存事業に精通した社員が新たなスキルを身につける場合、養った知識やスキルを日々の実務ですぐに活かせるでしょう。
社員一人ひとりが業務を効率的に進められるようになれば、無駄な人件費を抑えられ、さらには生産性の向上も期待できます。

また、新しいスキルを習得した社員によって、社内に新しいアイデアが生まれる可能性もあります。現場から時代の移り変わりに合わせた変化を起こしやすくなり、事業の陳腐化も防げるでしょう。

人材不足への対応

少子高齢化が進む昨今において働き手自体が少ないだけでなく、特に日本では優秀なIT人材は他先進国にくらべても少ないといえます。
社内にITに精通した人材を招くことは簡単ではありませんが、リスキリングで既存の社員にIT分野に関するスキル・知識を身につけてもらうことは促しやすいでしょう。

今後も人材不足の問題はあらゆる企業で深刻化すると予想されるため、できるだけ早く既存社員の育成に注力することをおすすめします。

エンゲージメント向上

リスキリングによって従業員に学びの機会を提供することは、従業員のエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。従業員がリスキリングにより目指すキャリアが明確になることや、その支援を企業側がすることは従業員のモチベーションアップも期待できます。
さらに従業員エンゲージメントが上がれば生産性・業績の向上が見込まれるだけでなく、離職率の低下にもつながるでしょう。

企業がリスキリングを進めるためのステップと注意点

企業がリスキリングを導入する際に踏むべき手順と注意点を紹介します。

1. 必要なスキル・知識を定める

2. リスキリングの教育プログラムを決める

3. リスキリングで使用するコンテンツを選ぶ

4. 社員に取り組んでもらう

5. 学んだ内容を実践で活かす

1. 必要なスキル・知識を定める

企業が推進するリスキリングの目的は、従業員がスキルを得ることではなく、経営戦略を実行するために教育をうながすことです。そのためには戦略や現在の状況に合わせて求める人材像やスキルを明確にし、それを補うためのリスキリングを実行できるよう計画する必要があります。

2. リスキリングの教育プログラムを決める

リスキリングに取り組む従業員が、効率よくスキルを習得できるようなプログラムを立てることも意識しましょう。プログラムの順序や構成にも気をつけ、改善の余地があれば常にアップグレードすることも大切です。

3. リスキリングで使用するコンテンツを選ぶ

上記のプログラムを参考に、リスキリングで使用するコンテンツ(教材)を決めます。自社で作成する場合は置かれている環境や業務に合わせたプログラムを組みやすいメリットがありますが、教育のノウハウがなければスキルの定着につながらない恐れもあるでしょう。
外部の研修(オンライン・対面)や教材などを活用する方法もあるので、予算や内容に合わせて検討しましょう。

4. 社員に取り組んでもらう

プログラムとコンテンツが準備できれば、従業員に取り組んでもらえるよううながします。ただし業務と並行しながら時間と労力をかけてリスキリングに取り組むのは、従業員にとって負担となりかねません。強制するのではなく、あくまで本人の主体性に任せることも重要です。

また、就業時間中にそういった時間を作るのか、就業後や休日などに取り組んでもらうのかなども、無理なく続けられるよう本人の意思を尊重して定めておく必要があります。

5. 学んだ内容を実践で活かす

リスキリングで学んだ内容は実務に活かせないと意味がありません。業務で実践できる機会を会社側で作り、フィードバックも与え、スキルを高め続けられる環境作りも意識しましょう。

リスキリングを進める際の注意点

リスキリングを進める場合の注意点として、ステップの項目でも記載しましたがコンテンツの作成に関する問題が挙げられます。

自社で作成する場合は教育のノウハウがなければ適切な教材が作れず、また座学形式にしても教える側の負担は大きいでしょう。OJTで現場に任せる場合も教える上司によって内容が異なると、企業が理想とするリスキリングにはつながらない恐れがあります。

なるべく手間を省きつつ高い効果を望むなら、外部の専門家に任せることをおすすめします。サービスによっては自社に合わせた内容のカリキュラムを構成して、プロの目線で実践的な内容を盛り込むことも可能です。

また、リスキリングは普段の業務と並行しながら学びの時間や労力を割く必要があるため、従業員のモチベーション維持も重要です。その点に関しても専門家の指導をもとに目に見えてスキルが高まれば、従業員のモチベーションを維持しやすいでしょう。

専門家のカリキュラムを活用するなら、企業のDXコンサルティングを強みとするINDUSTRIAL-Xが提供するResource Cloudの研修サービスがおすすめです。今後企業に求められるDXに関する知識・スキルを実践で活かせるよう体系的に学べるeラーニングや、現場で自ら課題を見つけ解決することを目指す対面型の研修もあります。
全体向けにはeラーニングによる研修を、今後中核となる従業員には対面型の研修を実施するといった使い方もできます。気になる方はぜひ以下のリンクから詳細をご覧ください。
>>「eラーニングで学ぶDX基礎講座
>>「研修_課題解決型DX人材育成プログラム

リスキリングの事例

高い効果が期待できるリスキリング研修の例として、上記でも触れたINDUSTRIAL-Xの「課題解決型DX人材プログラム」研修を紹介します。このプログラムはリスキリングとしてDX推進に関する基礎知識を学んだうえで、ケーススタディだけでなく今後現場で自ら課題解決を行えるようにすることが目的です。

具体的には自身の業務課題抽出や、現状に合わせた課題解決のためツール活用施策など、実務に落とし込むためのカリキュラムに重きを置いています。また他社事例も幅広くインプットすることで未来志向でDXに関する仮説を立てられ、自身の業界・業種と異なる企業担当が相手でも的確に仮説提案できるようになることを目指します。

研修後には毎回今後の業務に活かせるような宿題が出され、フィードバックを受けられるのもポイントです。宿題で出た優秀なアイデアはDX推進部門に提出し、社内での活用も可能です。
東京海上日動火災保険株式会社・大和ハウス工業株式会社などの大企業や、広島県・山口県などの自治体にも研修を実施した実績があります。
(参照:INDUSTRIAL-X『DX人材育成』)

リスキリングによって時代に合わせた変化を

技術革新やニーズの多様化が進む昨今において、企業には時代の変化に対応する力が求められています。そのためにはDXに取り組むことも必要ですが、従業員一人ひとりが変化に合わせてスキルを高めることも同様に重要です。

リスキリングへの取り組みは、会社でコンテンツを作り研修等を実施することも可能ですが、より高い効果を求めるなら外部の研修サービスの活用が有効です。研修サービスもさまざまなものがありますが、DXコンサルティングや人材育成実績が豊富なResource Cloudのサービスをおすすめします。

人材育成サービス特設ページはこちら

DXならResource Cloud

Resource CloudはDXに必要な人材や研修カリキュラム、ツール、戦略といったさまざまなリソースをサブスクリプション形式で提供するサービスです。業種・業界を問わずあらゆる企業のDX推進支援実績があります。
また、人材育成に関してセミナーや研修のみならず、DX人材の採用支援や業務委託も行っています。サービスの概要やお問い合わせ先はResource Cloudのトップページをご確認ください。

またResource Cloudを運営する株式会社INDUSTRIAL-Xでは「DX実現に向けた課題とコロナ禍における意向調査 2022年版」として、2022年6月時点の取り組み状況と昨年上半期(2021年4月~9月)の状況を比較したDXレポートを公開しています。
こちらからご覧ください。